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PAST & FUTURE

EP.0

萌芽

Signs
萌芽

MAWSIMの歴史は、1969年に日本の岐阜の地で創業した「サンウエスパ社(SUNWASPA Inc.)」をその発端とします。同社は「SUN + WASte PAper」を社名の由来とする通り、古紙の回収とリサイクル加工および製紙原料としてのそれらの販売を主たる業とする、いわゆる「紙くず屋」です。

原有匡がサンウエスパに入社した翌2012年の8月、いわゆる天啓というものが、グロテスクなエビの形をして、世界最深部より現れたのです。

——マリアナ海溝の水深1万900メートルに棲むそのエビの体内から、おが屑や紙などを高効率で糖分に分解する酵素を発見した。との報道に触れ、紙くず屋がエネルギー事業に進出する未来を妄想したのが、すべての始まりでした。

株式会社サンウエスパHP

EP.1

新たな地平

A New Frontier
新たな地平

2015年12月、シュレッダー屑などの難再生古紙を原料としたバイオエタノール製造の実証事業が始動し、妄想にカタチができはじめました。このエタノール製造技術は、植物繊維の細胞壁の主成分であるセルロースを糖化し、さらに醗酵・蒸溜するというものです。

サンウエスパがバイオエタノールの原料とする紙くずは、本来無用であったものであり、都市部において安定供給することができ、しかも従前の穀物由来のそれと異なり、食糧と競合しません。同社のバイオエタノール事業は、廃棄物・エネルギー・食糧などの環境問題を包括的に解決する可能性を秘めている、未来のための事業なのです。

紙くずをエネルギーへリサイクルするというこの新たな挑戦は、しかし日本の規制に縛られることも多く、我々はその目を、そのような規制の無い海外に向けることになったのです。

EP.2

ホテイアオイ

Water Hyacinth
ホテイアオイ

そこで我々が新たに注目したのが、カンボジア。そしてそこに異常繁殖する「ホテイアオイ」という水草です。

日本で金魚草とも呼ばれるこの水草は、世界中の熱帯・亜熱帯地域に帰化し、世界の侵略的外来種ワースト100にも数えられる南米原産の浮遊植物です。驚異の繁殖力を有し、7ヶ月で200万倍に増殖することが報告されており、水上輸送・漁業・生物多様性への被害が問題となっています。カンボジア、とりわけ100万人もの水上生活者が暮らすトンレサップ湖において、この水草の負の影響は顕著です。

——紙くずからバイオエタノールを製造する技術を用い、カンボジアの広大な沼沢に繁茂する害草ホテイアオイをエタノールに変える…セルロースを糖化醗酵することにおいて、紙くずとホテイアオイに違いはなく、未利用資源を原料とする点において、我々の事業ドメインに反しない…

エタノールをカンボジアで。我々がまさに取り組むべきものでした。

2017年6月、無尽蔵に増える水草からカーボンニュートラルなエネルギーを造ろうとする我々のプロジェクトは、JICAの採択を得て、それから1年に及ぶ実地調査を行いました。しかしそれによって明らかになったのは、収益化が困難、という究極の課題でした。

JICA案件化調査報告書

EP.3

再発見時代

Age of Rediscovery
再発見時代

我々のバイオエタノールはセルロースを原料とする次世代のそれで、害草だけでなく、廃棄物を含むあらゆる非可食性植物を原料とし得る点で有意義ですが、企業単体では収益化が困難という点で穀物由来のそれに大きく劣っています。

そこで我々は、ビジネスモデルを新たにデザインすることで解決を与えます。すなわち、熱帯の厄介者ホテイアオイからバイオエタノールを製造し、それを水上生活者のボート燃料とするなど、地域分散型エネルギーの普及する未来を展望しつつ、ここへの挑戦を持続可能とするための収益化事業を模索します。

例えばエタノールの付加価値は、飲料用とすることで、燃料用の100倍以上にもなります。それにカンボジアの特産品である胡椒やコブミカンなどのスパイスを加え、高品質なクラフトジンを蒸溜します。スパイス農園では、エタノール残渣を堆肥として用います。さらに日本で不要となった農機具を輸入し、エタノールを燃料として農地を走らせます。こうして造られたジンやスパイスは、プノンペンのバーやD2Cによってボーダーレスに発信していきます。また、ジンの副産物として消毒液を得ることもできます。

これらの構想を実現すべく、SUNWASPAの新しい半世紀を迎える2020年の3月、カンボジア発害草ベンチャー「UNWASPA」を起動しました。

我々は純然たる古紙関連業からスタートし、今、カンボジアで「UN(not) WASte PAper (古紙ではない)」事業を展開しています。

事業プレゼン動画

  1. EP.3.0.1MAWSIMの誕生

    MAWSIMの誕生

    ―カンボジアの首都プノンペン。
    2021年末、再開発地域に取り残された、半世紀以上前の雑居ビルの一角で、MAWSIMは誕生しました。昼は蒸留所兼オフィスとして機能し、夜はテイスティングバーとしてMAWSIM世界の門戸を開いています。

    風雨に晒されてきた民家の壁板を転用した床板。農村に打ち捨てられていた木の塊から仕立てたテーブルや扉。登り窯で焼かれた復興クメール焼のタイル。シェムリアップの職人が打ち出した銅のカウンター。これらを、我々のルーツである岐阜の手漉き和紙で作られた提灯ランプが照らし出します。

    そして2023年4月には「MAWSIM GIN」の製品化に成功し、「SPICES & HERBS」と「TROPICAL CITRUS」の2つのフレーバーを世に送り出しました。

    また同年6月には、カンボジア・コンポンチュナン州にバイオエタノールプラントが竣工しまし た。同州はトンレサップ湖のボトルネック部分に位置し、ホテイアオイの被害が大きく、 JICA事業におけるカウンターパートでもありました。 プラントは在カンボジア日本大使館の「草の根無償資金協力」によって、州政府との共同プロジェクトとして建設し、我々はプラントの設計と管理運営を担っています。

    ホテイアオイは水上生活者に回収を委託し、彼らの収入向上を図っており、さらにエタノール残渣によるメタン発酵によって、プラントの管理人家族のガスを賄っています。

    MAWSIM SHOPサイト

  2. EP.3.0.2世界一の栄冠

    世界一の栄冠

    ホテイアオイ・スピリッツを原料の一部に加えた我々のクラフトジン「MAWSIM」は、カンボジアと日本において販売を開始し、「未利用なもの、無価値なものを再定義する。」を事業ドメインとして標榜する我々の取組は、2022年12月、環境省の主催する「第10回グッドライフアワード」において環境大臣賞(企業部門)を受賞するに至ります。

    さらに2023年2月には、ジンの本場、イギリスのロンドンにおいて開催される世界最高峰のジンの品評会「World Gin Awards」において、我々の「MAWISM GIN」が「World's Best」の栄冠を勝ち取ったのです。アジア勢としては初の快挙です。審査は純粋な風味だけの評価であり、その背景は無関係です。
    まさに、環境課題ソリューションと、高付加価値商品の開発を、両立させた瞬間でした。

    第10回グッドライフアワード

    World Gin Awards 2023

  3. EP.3.1.0外来水草GX(現在)

    外来水草GX(現在)

    外来水生植物の異常繁殖問題は、熱帯・亜熱帯地域に限らず、どんどん北上しています。水域の富栄養化がその原因ですが、地球温暖化との相互作用についてもいくつかの関連が指摘されています。

    もちろん日本においても例外ではなく、十数種に及ぶ外来水生植物の大量発生が、止水環境に実害を与えています。そしてそれらの対策として防除された水草の90%以上が「一般廃棄物」として焼却処分されています。

    2017年よりカンボジアで侵略的外来水草「ホテイアオイ」の高付加価値化に取り組んできた我々としては、この日本の窮状を看過することはできません。為す術もなくただ燃やされる膨大なバイオマスに新たな価値を与え、かつ環境課題を修復する収益事業はあるだろうか?と模索します。

    そこで我々は、これらの外来水草を炭化することを提案します。これによって製造された「バイオ炭」の農地施用は、作物の生育に有用なだけでなく、国際的に認められた吸収源活動でもあります。水草が繁殖の過程で吸収したCO²は、炭化によって固定され、カーボンネガティブを実現します。また、富栄養化の原因である窒素やリンを、農作物へと還元することで、水質改善にも効果があります。

    さらに、炭のアルカリ性・多孔質という性質を利用し、「菌根菌接種バイオ炭組成物」を林に散布することで、国産トリュフ(セイヨウショウロ)・国産ポルチーニ(ヤマドリタケモドキ)・松茸など菌根性キノコの栽培化を目指します。

    2023年8月、我々の提案事業は、滋賀県「水草等対策技術開発支援事業」の採択を受けました。

    水草等対策技術開発支援事業

    外来水草GX事業概要(PDF)

EP.4

将来展望

Future Prospects
将来展望

世界最貧エリアのひとつでもあるカンボジアの水上生活村において、未利用バイオマスによる小規模分散型エネルギーを普及させるために、またその未来に至る取り組みを持続可能にするために、バイオエタノールを高付加価値な商品としてアウトプットすることによって収益化を図る私たちのビジネスモデルは、類似した問題に悩む、多くの国や地域への汎用性が期待できます。

侵略的外来種であるホテイアオイ分布エリアの大半は、高い経済成⻑率を誇りながら、他方でエネルギー・環境・医療・産業・食料の諸分野に課題を抱えています。しかしまたその一方で、熱帯特有の豊かな植生を持ち、エキゾチックなハーブやスパイスの宝庫でもあります。

こういう事実は、私たちのビジネスモデルが再現できることの可能性を、大いに示唆しています。将来、我々は現実拠点をこれらの 熱帯アジアに水平展開し、D2Cの手法を用いて全世界的に販売網を拡大していきます。